Lighting by Yourself
手づくりライティング
【著者】 小林茂雄+東京都市大学小林研究室
【発行所】 オーム社
【体裁】 A5判・144ページ
【定価】2310円(本体2200円+税)
はじめに
光というのは、わずかな操作で空間を大きく変える力があります。例えば室内灯を消して、キャンドルライトをテーブルに一つ置いてみましょう。それだけで、部屋に温かみが増し、美しい陰影が生まれ、人の表情を豊にし、隠微でロマンチックな雰囲気になるでしょう。もしも光を使わないで空間全体の印象を変えようとすると、壁紙全体を張り替えたり、家具を全部入れ替えたり、天井を取っ払ったりするなど、それはそれは大変な作業になります。しかも簡単に元には戻せません。光はスイッチ一つで劇的に変えることができますし、現状に復帰するのも容易です。だからこそ、斬新なデザインにもチャレンジすることができるのです。
私たちの身の回りには、様々な光のデザインがあふれています。インテリアショップでは工夫を凝らした照明器具が並んでいますし、レストランではシンプルで優美な光がテーブルを彩っています。商業ビルや歴史的建造物は煌やかにライトアップされ、冬になるとクリスマスイルミネーションが街じゅうに点灯されます。確かに多様で美しい光を楽しめるようになりました。しかしだからといって満足はしないでください。そうした光は自分たちでつくることができるのです。
この本は、自分の手で光のデザインをしようという人のためにつくりました。それも、枕元に置けるような小さな照明器具をつくりだすだけではなく、パーティーを光で盛り上げたり、建物をライトアップしたり、広場や道路をイルミネーションしたりするなど、様々なスケールのものを対象にしています。建を自分の手でつくることはできませんが、建物のライトアップはそれほど費用をかけなくても手軽にできてしまうのです。
この本で扱っている作品は、すべて筆者らと東京都市大学建築学科の学生によって制作したものです。照明メーカーやプロのデザイナーによってつくられたものではありません。作品の多くは、「キャンパスイルミネーション」という大学キャンパスを光で装飾するイベントで披露したものです。着想から制作まで半年かかったものもありますが、多くのものは一か月程度、屋内の小型の照明器具はほぼ一日でつくっています。特殊なランプや材料は使っておらず、できるだけ日用品や汎用品をもとにして制作するようにしました。ここでは私たちが蓄積してきたアイデアやノウハウを詰め込むように心がけています。
近年、LED などの新光源が安価で扱いやすくなったため、これまで以上に手づくりの照明デザインに取り組みやすくなりました。ここで紹介した以外に、もっといろいろな可能性が考えられることでしょう。利用する目的や場所が変われば、その種類だけ新しいデザインは生まれるものです。人によっても着想する光の様相は変わってきます。押し付けられたデザインを観賞するのは卒業して、私たちの手で、新しい光の空間をつくっていきましょう。