リーガル・ウォールの導入


落書き問題に取り組む活動として、私たちは合法的に絵を描く場所を与える「リーガル・ウォール」の導入を進めています。
下記の文章は、2003年7月9日に、小林が下北沢の「落書き防止対策実行委員会」 で提案した資料です。

リーガル・ウォールの導入について
下北沢の場合


武蔵工業大学建築学科 小林茂雄


 落書きに苦しむ欧米の都市の中では、落書き対策として、「落書き消去・取り締まり」「落書き防止教育」と併せて、「リーガルウォール(合法的な壁画)」を取り入れているところがあります。前2者は醜悪な落書きを除去し、予防することで、本来あるべき景観を取り戻そうとするもので、「リーガルウォール」は、若者の創造的な表現欲求を利用して、地域景観に美と活気を与え、また違法な落書きも抑えようとするものです。
 落書きは、それがどんなに優れた描写であっても、許可を取らず無断で描かれた違法なものは、決して許されるものではありません。質の高い壁画でも、描かれた当事者から見れば不快極まりないものであり、「不法に使用された」という感情は地域環境をよくするものではなく、公共秩序を脅かすものになります。同じ様な描写であっても、それが合法か違法かでは、地域に与える効果は全く異なるのです。「リーガルウォール」は、合法的に絵を描かせる場を与えるものですが、それには次の様な長所と共に短所があります。


長所
※ 落書き防止のために、子供のデザインした絵を描いたり(代官山の例)、デザイナーに依頼して絵を描いてもらうこともあります。ただしその場合は、落書きする側へは合法的な道を閉ざしたままなので、表現する場を与えたということにはなりません。


短所



欧米の例

 欧米などの報告を見てみると、多くの都市での「リーガルウォール」は、初期的には成功しても、長期的には失敗に終わる(落書きが減少しない)ことが多いようです。ただし、これは、リーガルウォールを十分に管理せずに放置してしまった結果だと考えられます。一旦荒廃を許してしまうと収集がつかなくなるのです。
規則をきちんと定めて、落書き防止活動と連携して運営すれば(違法行為と合法行為の区別をはっきり認識させる)、成功している例もあります。


オーストラリアNSW州ワリンガ市(シドニー市近郊)でのリーガルウォールの例(2000年〜)


設置場所
規則


その他の地域での規則として、

                                ↓
                  管理されたリーガルウォールは機能する






下北沢への導入についての私案

下北沢は、若者にとって非常に好まれる街であるため、リーガルウォール的なものをうまく導入すると、「落書きがない」街以上に魅力的な街になるのではないかと思っています。落書きが多い街は若者のパワーを生かして、芸術的な街に生まれ変わる可能性を秘めています。
リーガルウォールには、通常は、公共的な大規模な壁が利用されますが、ここでは下北沢で実現可能性がありそうな場所について考えてみました。


場所
駐車場の壁、店舗のシャッター、線路沿いの塀など
場所を貸してもらえる店舗などを調査する。落書きが頻繁にされるところで、人通りの多いような場所が望ましい。

方法
店舗のシャッターなどを指定する場合には、不特定の人間に自由に描かせるのではなく、絵の内容について、当事者同士で合意を得ておく必要があると思われます。特にシャッターは落書きすることの抵抗が小さいので。ただし、描き手をはじめから指定する方法ではなく、広く公募する方法(場を求める人に機会を与える)にすることが重要です。

公募の方法について
・ リーガルウォールの場所や条件、日程についてホームページなどで広報する。誰もが応募できるようにする。描画内容についてデザインした案(サイズを指定)を、郵送またはメールに添付して応募する。

条件の例


作品の選定
・ 応募があったものの中から、管理者(あるいは委託された委員会)によって作品を選定する。

運営
・ 落書き消去活動と連携して行わなければばらない。リーガルウォールと落書きは全く別であることを認識させる。
・ 合法的壁画はホームページなどで公開し、描き手へのメリットを与える。
・ 絵を描いてもらった若者にも、落書き防止活動に加わってもらう。