担当 松山舜一
現代において地下空間というものは身近な空間であり、中でも地下鉄は我々の生活において最も使用頻度の高い地下空間といえるだろう。地下は暗く、閉鎖されたイメージを持ち、地下鉄の駅構内はそれらの重々しいイメージを明るい照明によって払拭しようとしていると思えるほど均一で均質な光環境が形成されている。しかし地下鉄駅構内の機能や、そこでの人の歩行動線を考えると、本当にこれ程明るく、均一な光環境とする必要があるのかと疑問を感じる。
本研究では、駅における機能とそこでの人の流れを考慮すると共に、地下空間の「暗さ」を生かした新たな光環境を提案する。
計画の大きなコンセプトは地下空間に光がない状態から、必要と思われる所にその場所に合った照明器具の配置計画を行い、明るい所を作り出すものである。暗さがある事を前提とした計画であり、地下の持つ暗さによって形成される。光の配分については次の機能や動線を考慮する。
@機能に合わせる
地下鉄構内の機能は限られている。例えば、電車の乗り降りに必要な改札口、切符売り場である。これらは最も重要度が高い機能であり、そのため現状と同じく、鉛直面照度が500〜700lx前後の明るさが必要であると考える。それに対し、他の駅とを繋ぐコンコース(連絡通路)は主要な機能は通行であり、また常に人の流れが多いわけではなく、エレベーターとトイレについても利用する人は限られているのが現状である。そこで必要以上に明るく照らさず、天井、壁に発光面を向けその反射による間接照明を創り出し床面鉛直照度が100lx前後になるように計画した。そしてそれらを連続的に配列し壁・床からの距離によって明るさを変ていく。改札口からホームまでの階段部分も重要な機能を持つが現状のように上部からただ照らすのではなく、踊り場の床面を20〜30cmの距離から照らしその反射光によって階段全体を柔らかく包む事を計画した。
A人の流れ、行動パターンに合わせる
地上出入り口からホーム間は最も利用者の使用頻度が高く切符売場、改札口があるため、一日を通して利用者が減ることがない。特に朝(通勤時間)と夜(帰宅時間)の時間帯は利用者で埋め尽くされる。しかし、朝と夜とでは流れが変わり、朝はホームから地上への流れが多く、夜は地上からホームへの流れが多くなる。そこでまず、発光面を見せないように地下へ向かう人が多い時間帯では下向きに、地上へ向かう人が多い時間帯は上向きの光にする。次にホームまでのコンコースでは人の流れの多い壁側に蛍光灯を連続的に配置し、時間帯による流れの変化に合わせて配列の間隔や壁に対する角度を変えるように計画した。