夜は暗くてはいけないか

暗さの文化論

乾 正雄

1998年 朝日新聞社





 


油の火→蝋燭→石油ランプ→ガス灯→白熱電球の発達は浸透時期こそちがえども欧米も日本も同じ順序をたどっている。

しかし欧米と日本のそれで決定的に違ったのはその後入ってきた蛍光灯への対応であった、と先の『夜は暗くてはいけないか』では問うている。

一言でいうと蛍光灯以前の光源には生活の歴史的な流れの関連性がある。蛍光灯は光の質においてもその照明器具のスタイルにおいても、欧米の人々の暮らしの感覚からはかなり違ったものであった。けれど急速な「和」から「洋」への居住環境の変化や生活ぶりの転換のなかで日本人にはこの"蛍光灯"が"流れの分断"という意味においてもうまく機能し、融和した−と。

なるほどなあ、とぼくも大いにうなずくのである。

               椎名 誠『活字の海に寝ころんで』(岩波新書)より