『環境心理』 
新建築学大系11

乾 正雄、長田泰公、渡辺仁史、穐山貞登

1982年 彰国社




人間の存在を左右するデータには説得力がある。

ただし、これだけでは建築は出来上がらない。

なるほど、死ぬか生きるかというぎりぎりなところまでいけば、心理学などのんきすぎるかもしれぬ。

しかし、人間の価値はただ生きるだけにあるのではない。

日常生活における人間は各人各様に好きなように生きているのであり、建築は九割九分までそういう人間を相手にしている以上、バラツキの大きい心理的データは不可欠なのだ。

ふだんの人間のための建築を考えるのには、ふだんの人間のデータが分かっている必要があるのである。


(まえがきより)