「とりつの灯り2016」高架橋への光の照射による街の景観向上
普段何気なく利用している施設や店舗にも、改めて目を向けると人の興味を引く要素や新しい発見が隠れている。
それぞれの隠れた土地の個性、魅力にスポットを当てることで街に持続的な活気をもたらすことができると考える。
都立大学駅周辺の高架下商店街を対象とし、高架橋を非日常的な色や光によって幻想的な空間にすることを試みた。
見慣れてしまった高架構造物をライトアップすることで、高架下の空間や商店街に対してどのような意識の変化が生じたのか検証する。
「都立大学高架下商店街」
都立大学駅周辺では2015 年9 月30 日に東急東横線都立大学駅高架下と駅前の既存の商店街が共にリニューアルした。
駅側に新たに7 店舗の飲食店などが入居する商業施設が開業し、2 階部分には住民の声に答える形で駐輪場が設置された。
テナントには都内初出店の本格的珈琲が楽しめる「倉式珈琲店」や素材にこだわった「カンティーナ カーリカ・リ」など
「ToritsuNade(トリツナード)」をコンセプトにした都立大らしいコダワリを持った店舗と、地域住民から親しまれている昔ながらの店舗が混在している。
「設置前の状況と設置概念」
都立大学駅周辺の人々はリニューアルした部分に留まり、昔ながらの店舗が建ち並ぶ商店街の奥まで足を運ぶ人は少ない。
それは移転により既存の商店街が駅から遠ざかり認知度が下がったことが原因だと考えられる。
また、リニューアルした商店街は自然との調和、照明は温かい暖色系の色温度に統一されているため、移転先の商店街の印象は薄れてしまった。
人気が薄い奥の商店街では、高架橋特有の「殺風景」「不気味」「圧迫感」「重量感」といったマイナスなイメージが強くなる。
3つの高架下では共通のテーマを元に光の演出をすることで、まずは演出に気づいてもらうことから始まり、
高架橋を辿るように商店街に誘い込むと同時に、マイナスなイメージを払拭したい。
「ライトアップ」
2016 年11 月20 日から2016 年12 月28 日の期間、16 時30 分から22 時までの間、ライトアップを行った。
高架下A では高架下C まで気軽に辿るスタート地点として、自然な形で溶け込むよう青い光とレーザーライトでコンセプト(冬の夜空)を表現した。
また、地元の幼稚園児が制作したオーナメントを吊り下げることで人々の目を引く演出となっている。
高架下B では高架橋の構造を存分に活かし、高架下をより魅力的な空間となるよう、レーザーライトとカラー照明を用いて派手な演出とした。
また、タイマーで5分に一度配色が変わる工夫がされている。
高架下C では青の光で高架下と商店街全体を彩った。青い光と店舗の光が調和することを狙い、商店街の端まで辿ってもらうことと共に、
街に一体感が増すよう計画した
「ワークショップ」
2016 年11 月8 日に大岡山保育園と碑文谷保育園の2 か所の保育園でワークショップを行った。
ワークショップの内容は高架下A にて、星空から舞い落ちる雪を表現した「雪の結晶のオーナメント」を制作。
保育園児にも安全かつ、自分の力で比較的安易に制作できるよう防水加工された折り紙を使用した。
園児たちには実際に当日、都立大学駅周辺のライトアップで使用するカラー照明とレーザーライトを用いて光を直接体感してもらった。
イベントの趣旨がわからない子供たちにも演出の光を直接体感してもらうことで今回のイベントや街に対する興味や愛着が増すことを目的とした。
製作の様子
光の体験の様子
「アンケート調査と結果」
ライトアップに訪れた10 代〜 60 代以上の70 名(男性33 名女性37 名)を対象にアンケート調査を行った。
結果は上のグラフに示している。
立ち止まってみたくなくこと、先の方まで歩いてみたくなることなど、意図が概ね達成できた。
店舗が魅力的に見えたり、場所に対する関心を向上させる効果もあった。
否定的な印象を持ちやすい高架橋をライトアップすることにより、周囲の景観や店舗の光とマッチし、商店街を魅力的に見せ、
それがこの場所に対する関心を高めたと考えられる。
しかし一方で、
「青の光が不気味」という否定的意見も少数見られ、コンセプトを意識した青の光は多用しすぎると逆に不安感を与えてしまうという結果も得られた。
住民用アンケート結果
住民へのアンケートでは、安心感が得られ、来年も継続してほしいという声が聞かれた。
都立大学駅周辺の景観にあったライトアップを高架橋中心に行うことで商店街に対して
関心や優しさを感じられる演出になったと考えられる。
「今後の計画」
電車から見えるよう高架橋A 周辺の遊歩道まで範囲を広げる必要がある。
演出としては季節に合わせた色で樹木を派手に照らすことで注目を集めることができるのではないだろうか。
地域との繋がりをより高めるためにも、青の光で統一するのではなく暖色系の光を用いて店舗の光と関係性を持たせる。
また、住民と商店街の店舗を巻き込み、各店舗の個性を表したLED ライトを組み合わせ、その場で装飾品を制作する参加型ワークショップを開催する。
作品は自由に周辺樹木に装飾することで閉店後にも店舗の光で街を彩ることができる。
「広報用ポスター」
本活動は、トリツフードセンターが主催し、作品の制作を小林研究室が行いました。
Hortaの増沢隆樹さんに全体のコーディネートをしていただきました。
光でさらに街を盛り上げていきたいと思います。