岐阜県白川村平瀬温泉での
街路周辺の見通しを高める照明方法の提案
2006.9〜


2006.9/12〜19まで、岐阜県白川村平瀬において、街並みを美しく照明する実験を行いました。




平瀬の概要
白川村の平瀬地区は、白山の山間にあり、南北2kmに亘る細長い形の集落である。同村内に白川郷合掌造集落やスキー場が位置する温泉街であり、キャンプ場が山際にある。岐阜県と富山県を結ぶ幹線道路に沿って街並みが続いており、またその脇には庄川が流れている。1995年には白川郷が世界遺産に登録されたことで、岐阜・名古屋方面から白川郷に向かう観光客による通過交通が増加した。しかし、2003年に国道156号の平瀬バイパスが完成したことで、通過するためだけの自動車は非常に少なくなった。現在、通過型から滞在型へのまちづくりが模索されている。平瀬温泉共同浴場やキャンプ場の再整備などが計画されていると共に、歩行者のための道路づくりや街並みの整備も課題となっている。その一環として、防犯と安全を考慮した平瀬らしい夜間環境計画が望まれている。




平瀬の街並みを調査したところ、図のように、街路からは建物と建物の隙間を通して、左右に視線が広がっていることが分かりました。特に川側にある屋外の空地は奥が抜けており、非常に見通しがよいものでした。また、庄川沿いの遊歩道からは、川と同時に街路まで見通せます。橋や川の対岸の道路からは平瀬の街並直線状に広がっているのがよく分かります。





しかし夜間になると、道路だけは街路灯によって照らされていますが、周辺の空地はほとんど見通せることができません。そのため、街路に面した空間の奥行きが感じられず、平瀬に特徴的な風景が消えてしまっていると感じました。また、道路を歩行中に、見えない空地に対して不気味に感じたり「誰かがいるかもしれない」という不安を感じることがあることも分かりました。



私たちは、街路に隣接するボイドに最小限の光を与えることによって、夜間にも平瀬らしさを醸し出せるような空間づくりができるのではないか、またそれによって、より安心して歩ける歩行環境が構築できるのではないかと考えました。


そこで、平瀬の主要街路約250mの範囲を対象に、建物のエッジや玄関先、空地などに光源を配置する実験を行いました。用いた光源の数は115個です。この提案時の光環境では、既存の街路灯を消灯することにしました。実験の結果、現状とほぼ同じ消費電力でありながらも、夜間の街並みの見通しが高まり、また街路を歩行するに感じるストレスも軽減できることが分かりました。


提案時の街路の風景



遊歩道から畑を通して街路を眺める



庄川に架かる橋からの風景
小林研究室