キャンパスイルミネーション 2006 
来場者の声



学生の皆さん、無事終了お疲れ様でした。ちょっと残念な天気でしたが、多くの方に見に来て頂いたようで良かったです。確かに、開催前日、初日と雨で十分な準備が出来なかったことは、大変な負担となったことでしょう。木曜日に撮影させていただきましたが、まだ準備中の場所もあり未完成で写真を撮影してしまったので、少し残念でした。私の方も、ぶっつけ本番で撮影時間も1時間くらいと切羽詰った状況で撮影していましたので、至らないところ、ちゃんと撮影できなかった作品、もっと時間があればこういうアングルも撮れたのに、と反省しきりです。
キャンパスイルミネーションについて、私なりに感じたことを書かせていただきたいと思います。専門家ではありませんので、幼稚な文章であることをお許し下さい。
1 影の巣
今回のテーマを象徴するような作品でした。蜘蛛の巣の影がはっきり出せていて、照明の色の選択等、雰囲気作りが良かったです。動く蜘蛛のライトは子供たちに評判でした。強い光の中を歩く人の影が、吊るされた多くの布にライトにあたり、通常のはっきりした物とは異なる影を演出していました。写真でしか見れないのが残念ですが、長時間露光では布は光のシャワーとなり、そこを歩く多くの人の反射が非常に綺麗でした。
2 ↑LINK↓
ここは光の色が綺麗な場所でした。表に置かれたキューブの光が、綺麗さと温かさを演出し、4本に伸びる光が広がりを表現しているように見えます。材料もCDとCDケースとはアイデアも良いですね。中央のCDケースの塔は、透明なケースを重ねることにより出来る微妙な透過差を利用して、平面の壁に影を立体的に見せていました。また、CDが虹色に見えるのは知っていましたが、強い光を当て反射を利用して虹を描くというのは良く考えついたと思いました。これは肉眼でもはっきり見えますし、写真にも収められました。
3 喜怒哀楽
この作品を見たとき、昔の人間の生活を思い浮かべました。4本の木に設置されたオブジェは、テントのよう。灯を手に入れた人間が夜を過ごすなかで、生活の中には喜怒哀楽がありその姿がシルエットとなって現れる。人が中に入ったとき、そのシルエットは左右に揺れたり大きくなったり小さくなったり。人々の楽しさが伝わってきます。(実際、中にいる学生さんは楽しそうでしたが・・)4つの作品間の小さな三角形もテントと統一感があってよかった。ただ残念なことは中にいる人の動きが写真では表現し切れなかったことです。
4 さんぽみち〜日常の潜在美〜
非常に柔らかな光でした。照らされている灯りが原色に近い色だったら、テーマパークのようになってしまい、心が落ち着くと言う感じでは無かった思います。淡い色の中にオブジェを置き、その影を出す。光だけでも綺麗なのに楽しさも演出された散歩道。非常に計算されているなと思いました。夜だけではなく日中も楽しめそうです。
5 ひかりとヒカリ
実はここの場所の撮影中に学生さん達の話が耳に入ったしまったんです。「場所が悪いよね〜」って。確かにそう言われてみるとそうかも知れません。しかし私は校門から入ってきて左を見たときに「わっ」っと思ってしまいました。路地に置かれたフィルムケースの灯り、木に配置された丸い灯りが奥へと誘うのです。そして奥には光の塔です。何個もの灯りが非常階段の鉄格子の影を作り、出来た影で立体的な塔に見えるのです。そして近づいていくと階段を登って行きたい。と言う衝動に駆られました。ここはただの校舎に挟まれた暗い路地と不気味な非常階段ではありませんでしたか?それが照明の力でここまで雰囲気を変える。今の夜、この場所を見てみて下さい。その落胆差は大きいと思いますよ。その差の大きさこそが成功なんじゃないでしょうか。
6 Join Us!
入場者に灯りを持って行かせるとは、良くアイデアが出るものだと思いました。蝋燭を持った来場者が、キャンパス内を歩く姿は風情がありました。また肉眼では見られない姿が写真には写っていました。動く灯りは線になります。他作品とコラボレーションしている写真が多いことに気づきます。仲良く寄り添う2本の線なんてとても良いですね。今回はじめて行きましたが、作品間のキャンパス内の道は結構暗い。これを持つことにより来場者の安全性も考えられているのなら賞賛ものです。
7 Arch-Nature Cafe
空中に浮いたオブジェが非常に印象的な作品でした。暗くなれば細い線は見えなくなるので、照明としたら面白いアイデア。普通、照明はスタンド等で立てられていますから、異空間な感じがします。地上に立てられているオブジェは古代的な灯り、その上には未来的な明かりが感じられました。私が到着したとき、まだ準備中でした。最後の追い上げがありましたが、完成作品を撮影できなくて残念でした。
8 光の海
今回の作品の中で、一番落ち着ける場所となったのではないでしょうか。四角い段の上に置かれた三角形に座った来場者が、そこを動かなくなった。それはやはり長い時間見ていたい、人間が本能的に求める癒しという欲求を目覚めさせた。ということでしょうか。蝋燭のやさしい光がカップの紙を通して地面を照らし、風によって微妙に揺らめく光が「海」を表現しています。この広い空間にあれだけの蝋燭を灯す苦労は計り知れませんが、電球ではあの雰囲気は出なかったと思います。写真ではその揺らめきを表現しきれないところが辛いところです。
9 guide, ride, slide
白い紙に、人の影が大きくなったり小さくなったり、移動したりという変化が見られました。貼られた紙も全面ではなく、モザイク状になっていたところも、その変化を大きき見せる要素だったかと思います。もう少し場所的に大きな所(大きな面)が与えられていたなら、壮大な作品が作れたかもしれません。ただこれも写真にその変化を写すのが難しく、作品の良さやテーマを写し切れませんでした。
10 YURAGI
教室に囲まれたこの丸い空間に迷い込んだとき、テーマの通り深海に迷い込んだような気がしました。周りを遮断しているためか非常に静かで、海の底はこんな雰囲気なんだ。と思えました。青い光の中にある赤い光は、そんな形をしていないのに深海の生物を思わせます。そこに入り込むと、自分がそこに住む深海魚になったような気分になり、海の底から見上げる空は泳げば上がって行けそうな感じでした。学生さんが回してくれていたペットボトルも「泡」の雰囲気が良く出ていました。また上から見下ろすと違う雰囲気も楽しめたのですが、来場者の皆さんはそこまで回っていなかったようで残念です。
11 ミチビくヒカリ〜カムカム
作品が広範囲になっているため、それのみを写真に収めることが出来ませんでした。各作品間に設置されていたものがそうだと思いますが、それがその班の作品だと来場者に認識しづらいことが残念でなりません。代表的のものは敷地を跨ぐ道路の所に設置された3本の灯りかと思いますが、開催中にも数を増やすかの検討が行われていました。翌日には更なる進化が見られたかもしれません。今回この作品達は、縁の下の力持ちとしてイベントには無くてはならない存在だったと思います。
全体を見て
第一印象は「非常に暖かな感じのする照明」でしょうか。近年照明の主役となりつつあるのはLEDです。省電力で長寿命、発熱量も少ない。しかしこのLEDには温かさが無いのです。私はこのLEDの光を見ると「LEDは目に痛い光」と思ってしまいます。今回のイベントの多くは裸電球や蝋燭といった温かさを感じる素材で作られていて、それが来場者の心も温かくしているようでした。しかしながら時代と共に明かりも進化をしていかなければなりません。この進化していく照明器具の中で、いかに人間が安らげるような灯りを造り上げられるのかが今後の課題だと思いました。このような有意義なイベントを長く続けて頂きたいと思っております。
NIGHT Windows 〜東京の夜景


 5月26日の「第6回マイテック産学技術交流会」で、私は初めて小林先生の講演―「街の魅力を光で高める」―を聴きました。「街」の魅力を引き出す「光」の役割の話は、私の興味と関心を呼び起こすテーマでした。自らの経験知と理論知に即していえば、私はかつて専門学校で「芸術学」の担当教員として、中世→近代の転換期の「啓蒙(enlightenment)」という「光」(時間)の問題に哲学的に取り組んだことがあります。また、照明実験が行われた、富山県富山市の八尾町、横浜市中区の日ノ出町・黄金町は、かつて私も何度か実地に訪問した「街」(場所)でありました。美とは「現実」を再構成(≠拒否)する想像力に関わると考える私には、披露された照明美のあり方について共感的に理解できたように思われます。なお、大学と地域の交流の視点に触れて、小林先生が吐かれた、全力で取り組んでいるもの(研究)を地域社会へ開放するという一家言は、まさに見識というべきでしょう。
安田忠郎(武蔵工業大学 工学部長)


 キャンパスイルミネーションは、昨年はもっとこれ見よがしのものが多かったですが、今年は地味で落ち着いて見えました。正門を右へ出て右側にまわった塀の柵のあいだにおいたロウソクなどは代表的で、効果の上がらないことでは屈指でした。同じことを豆電球と紙コップでやればずっと簡単でしょうが、それだとあのゆらぎが出ませんね。しかし、こんなに効果の上がらないことを一生懸命やっている学生の姿を想像すると愛すべきです。以上はもちろんほめているのです。
 やわらかい光にかたい器具-対-かたい光にやわらかい器具のコントラストも、専門的におもしろいテーマでした。効果がはっきりと出てなくて、一般にはわかりにくそうでしたが。もう一工夫欲しかった !

乾 正雄(東京工業大学 名誉教授)


 キャンパス・イルミネーション開催日の4日中2日しか実際に展示ができなかったのは本当に残念でした。というのも各作品が進化するのに十分な時間が与えられなかったと思うからです。それぞれの班の説明を聞いて、表現しようとした着想や工夫の豊かさに感心しましたが、それを実際の空間で作って見て、自分たちの作ったものが予想以上に素晴らしかったり、思ったほどではなかったりした感慨が伝わってきました。
 2−3の作品について、着想は面白いものの、さらに進化の可能性のあるものをあげてみます。作品7『Arch-Natural Cafe』は、ゲシュタルト心理学でいう「かくれた輪郭線」の3次元版ですが、かくれた稜線の軸が通っていないのでキューブの印象が弱かった。また隣り合うキューブの要素が交じり合ってしまう(同類要素の集合)のを避けるため色を変えるなどの工夫があってもよかった。
 作品8『光の海』は解説では都市を表していると言っていた。ならば光の連なり(通り)や粗密(中心と周辺)といった人為が見えるよう配置に工夫が欲しかった。そういった意味を込めないで海に浮かび漂う灯籠のような今のままでも十分きれいだったが。
 作品9『guide, ride, slide』は訪問者のシルエットによる演出というアイディアは卓抜だが、光源の技術的工夫(光束を絞る、風などで揺れる翼を付けるなど)がもう少しあっても良かったと思う。
 良いところをさらに延ばし、まずいところは修正するさまざまな実験が行われるはずの時間がなかったことが本当に残念でした。しかし、今年の学生が次の学年にこの実践で学んだ経験を話して伝える、つまり遺伝情報として継承される機会が設けられれば、それによって武蔵工大のキャンパス・イルミネーションが進化をとげることが可能だと思います。この楽しいイベントにまた参加して進化した姿をぜひ見たいと思います。
大野隆造(東京工業大学大学院 教授)


 天候には少々恵まれなかったようですが、初めて拝見させていただいた武蔵工業大学のキャンパスイルミネーションのイベントは、大変感銘を受けました。照明という目で見て感じる環境要因でありながら、大学の建築学の授業では、このように実際の空間を照らす体験を得られるプログラムはあまり例がありません。あったとしても、単に一棟だけの建物を照らしたり、照明器具を製作するようなものに終り、キャンパス全体を照らすという体験が出来ることは素晴らしいと思います。また、大学の先生たちから評価を受けるだけではなく、地域の方々が見学に来られて様々な印象を感じていることを、その場で見ることができるというのも素晴らしいと思います。傍で見ていると子供達の振る舞いが良かったですね。
 個々の作品の感想を述べますと、やはり空間全体を使って、その場を作るもののインパクトが大きいと思いました。皆さんの仕組んだ照明が、場所のポテンシャルをどのように変えることが出来たのか、なかなか興味深い結果が得られたのではないでしょうか。
 また、多少気になったことを取り上げますと、スポットライト的な照明を使う際の配慮に検討の余地が多いようにも思えました。いろいろな演出効果を考えた上で設置されたスポットライトが、別の場所からは非常に眩しくて問題になる場所が幾つかありました。おそらく、指摘するまでもなく、実際に作ってみたら問題があったことに気づいた方もいたと思います。修行の場、という意味では、そのような問題点を事後に考えることも非常に大切でしょう。
 今後、皆さんの中から実際に日本の夜の街を美しくしてくれる人が輩出されることを願って止みません。
宗方淳(東京大学大学院工学系研究科 助手)


 手造りながらもレベルの高い作品が多く、びっくりするとともに楽しめました。光のデザインは、まず自分が楽しみ、それから他の人にも楽しんでもらうということが原点だということを再認識しました。
 全てよくできていると思いますが、「影の巣」「YURAGI」「↓LINK↑」「光の海」などが印象に残りました。
松下進(松下進建築・照明設計室、武蔵工業大学非常勤講師)


 先生の講演会も大変興味深く拝聴させていただきました。ロンドンの町中に1年住んだ際、夜道は日本に比べると確かに暗 かったですが、明かりが線もしくは面で繋がっているので、夜の街並も楽しめたことを思い出します。さらには建物の中のちょっとした明かりがもたらす防犯効果も大変興味深いデータでした。昼間では見えすぎてしまうことも夜だからこそ、本当に見せたいものに 光を当てることができる照明のもたらす効果にますます興味を持ちました。
 さて、学生のプロジェクトへのコメントですが、私が理解できた範囲で簡単にまとめてみました。評価のポイントは、タイトルやコンセプトをどこまで上手く表現できたかです。ちょっと厳しく書いてしまいましたが、お許しください。
 1 影の巣 考え悩んで努力した作品ですが、残念なのは学生のひとりから説明を受けるまで、何をやりたいのか、どこまでが作品かがわかりずらかったです。街路灯など、余計な明かりが邪魔をしていたことや、帰宅する学生人通りが多すぎたことが原因ではないでしょうか。暗くて、人通りが少ない場所を設定すればきっと予定通りの効果があったと思います。
 2  LINK 表現するのが難しい壮大なテーマにチャレンジしたと思います。壮大すぎたのかもしれませんが、目指す方向が若干ぼやけてしまったような印象を持ちました。
 3 喜怒哀楽 4本の柱に置き換えたのは少し直接的な表現方法のような気がしますが、形にするのは難しかったことと思います。
 4 さんぽみち 木漏れ日が詩的な空間演出に効果的でした。さんぽみちというテーマから個人的に想像したイメージは、気ままな散策での偶発的な出会いだったので、スロープに等間隔に置かれた小作品群の見せ方には、もう一工夫あった方がよかったと思います。
 5 ひかりとヒカリ テーマは面白いのですが、硬い素材の光の方がやわらかい素材の光よりも硬く感じてしまいました。もうすこし素材の選定に試行錯誤がほしかったです。
 6  join us 光を配るという発想は良いと思いました。完全な闇夜であれば、より幻想的な世界が演出できたような気がします。
 7  Arch-Nature Cafe 建築をフレームの一部で表現したのは良いと思いました。一方で、自然を工作してしまったのには若干違和感を覚えました。自然は造らないから自然なのではないでしょうか。また、個人的には自然と建築をつなぐ存在を我々人間とした方が良かったのではないかと思います。
 8 光の海 あちこちから光が集まって光の海となるという詩的な印象は伝わってきました。ただし、個人的には、その海が雲になり、また新たな光が創造されるという続きのイメージがほしかったです。 
 9  guide,ride,slide タイトルやテーマが上手く作品に表現されていると思いました。さりげない仕掛けによっていつの間にか、自分がその作品の一部になってしまっている点がとても印象的でした。既存のベンチで桜を表現したのもなかなか良いアイデアです。
 10 YURAGI 吹き抜け全体を利用して深海を上手く表現していると思いました。しかし、テーマを読むと吹き抜け部分は実は空のオーロラだったんですね。
 11 ミチビクヒカリ〜カムカム 各作品の特徴を表す光が矢印だったのでしょう。残念ながらキャンパスに配置された全ての作品を見ることはできませんでした。
佐々木健(建築家、武蔵工業大学非常勤講師)


 アイデアとして面白かったのは、何もない空間に建築空間を囲った作品です。また、深海のものも面白かったです。ペットボトルの水に照明を当てて揺らしたもの。これは常設にして、お客さんが揺らせるような参加型にしたら、もっと盛り上がつたかもしれません。照明を使わないで反射板を使ったものも面白かったです。反射板や蜘蛛の巣にもう少し光りを当てて、反射を有効に使ったらもっと迫力が出たかもしれません。
西邑桃代(フリーデザイナー、「日本の風」代表)


 「光の海」は、その場所の特性を活かし、光の魅力を素直に表現した作品として好感が持てます。
 「ひかりとヒカリ」は、まだテーマが十分に絞られておらず、よけいな表現も多かったのですが、深緑の樹木と照明のあり方にチャレンジした点を評価します。冬の葉のちったあとの樹形を活かしたイルミネーションや、夜桜や、紅葉などの樹木全体のライトアップは良く知られていますが、深緑の樹木を生かした照明のあり方は、あまり見たことはありませんし、意外と難しいことかも知れません。今回が、そのきっかけとなることを期待しています。
住吉洋二(武蔵工業大学 教授)


 通用門のところにコップを積み重ねてろうそくを光らせていたのはきれいでしたね。単なる照明という意味を超えて、人をガイドする力を持っていました。それにしても良いイベントですね。
手塚貴晴(武蔵工業大学 助教授)


 キャンパスイルミネーションご苦労様でした。今年は雨で2日つぶれてしまい残念でしたが、楽しませていただきました。私がよいと思った作品を下記のとおり報告いたします。
 『guide, ride, slide』 歩く人の影が、手すりや樹木、建物に映し出されるというアイディアが面白く感じました。場所の特性とテーマをうまく関連付けられたと思います。奥のさくらを天井に映し出す部分とその周囲について、もう少し目立つ演出を行うとさらによかったのではないでしょうか。
 『Arch-Nature Cafe』 屋外に光でキューブの空間を作り出そうという試みが興味をもてました。しかし、外から見ると複数の空間が重なってしまい効果が薄れているように感じました。2日目のように色で区別するのもよかったのではないでしょうか。また、シルエットというテーマとの関連性が弱い気がします。
 『さんぽみち』 シルエットを生かして、楽しい「みち」が演出されていました。しかし、樹木のシルエットがもう少しはっきりしていた方がよかったと思います。
山口勝己(武蔵工業大学 助教授)


 期間中不安定な天気のなか、大変おつかれさまでした。ライトアップされた夜の構内は、日常見る無味なキャンパスが多様に彩られとても美しかったと思います。どれもみな創意工夫にあふれ、かつコンセプトに重きをおいて作られ、製作の熱意は非常に伝わってきました。ただ、技巧やアイディアの構築に走りすぎたのかもしれませんが、純粋に綺麗だと思わせてくれる作品も少なかった気がします。主観と客観のバランスと各々の素直な感覚を大事にしながら、今回の経験を皆の今後に生かして下さい。タイトなスケジュールの中、本当にご苦労様でした。
鈴木浩(武蔵工業大学 技術員)


 キャンパスイルミネーションは年々スケールアップされ、作品の完成度も高くなってきているように感じました。どの作品もコンセプトどおり表現できていましたが、中には若干表現しきれていない作品も見受けられました。しかし、そういった作品もコンセプトはしっかりしており、もう少し工夫すれば魅力的に仕上がるものばかりだったと思います。
 1「影の巣」
上空に作られた蜘蛛の巣とその影に挟まれることにより、緊迫感が生み出されていました。また、トイレットペーパーで作られたスクリーンは、風が吹くごとに立体的に揺れるので、映しだされた影も立体的になり、人の存在感が生み出されていました。
 2「↓LINK↑」
虹色に彩られた神殿のようで幻想的な空間となっていました。作った映像を投影するのではなく、廃品となったCDを再利用することで虹色の空間を演出しており、見た目だけでなく、環境にやさしく、製作費削減にもつながっている点が評価されます。
 3「喜怒哀楽」
「喜」や「楽」といった似たテーマの違いを表現するのに苦労しているように感じられました。「喜」のテーマではメッセージの書かれたカラーフィルムが張られていましたが、他のテーマも来場者が参加、体感できる空間として演出されていれば、完成度が上がったのではないかと思います。例えば「怒」の空間は、赤い塗料の入ったボールを怒りとともに投げつけてもらって、徐々に作品として完成させるなどはどうでしょうか。また楽は、テント状の空間にせずオープンにし、光源のミラーボールのみを隠して漏光で樹木や芝を照らし出すと、より「楽」が表現できたのではないかと思います。植栽が豊かな空間の特徴を有効利用することもひとつの手だったと思います。
 4「さんぽみち」
比較的シンプルな作品ですが、足をかたどった照明など、影の特性をうまく利用していました。特に木漏れ日を表現していた照明は、樹木が風に揺れる様子が路面に投影され涼しさを与えてくれました。武蔵工大にある樹木を風景資産として視覚化されていた点がよかったと思います。
 5「ひかりとヒカリ」
照明器具にフィルムケースを用いることで、独特のグラデーションが出ていました。空間全体はバランスよく演出されていたと思います。ただもったいなかったのは、樹に吊るされていた電球のワット数がすべて同じというところです。10Wだけでなく20W、40Wなどワット数の異なるものを組み合わせるだけで、光が立体的に浮かび上がる空間が演出できたのではないでしょうか。
 6「Join Us!」
ろうそくのあかりを来場者がひとりひとり持ち歩くことで、暗がりの学校内に多くの人の存在を示していました。投光器やプロジェクターを用いて空間を演出するのも魅力的ですが、ろうそくの小さなあかりで演出された空間も非常に魅力的でした。
 7「Arch-Nature Cafe」
コンセプトはよかったと思いますが、頭上に吊るされていたブロック状の照明器具とテント状の照明器具の空間が分離していたように感じました。2つの空間を混ぜてバランスよく配置することで、コンセプトの人工物と自然が手をつなぐ場を表現できたのではないかと思います。
 8「光の海」
階段状の広場に多くのろうそくを配置し、見事に光の海を表現していました。光源にろうそくを使用したことで光のゆらぎを生み、光の波が現れていました。小さな光の集合により、海や波の大きな力強さを感じることができたと思います。
 9「guide,ride,slide」
人の影を校舎の壁に投影したり、紙を高欄に貼り付け影の変化を楽しむ演出がされていました。夜空や影の暗さと照明された部分の明るさのコントラストが出ていた点は、シンプルで良かったと思います。しかし、ハイビームのみによる照明は少し単調だったような気がします。周期的に光色をかえたり、高欄に貼り付けた紙も面で固定するのではなく動きが出るような工夫を加えると、より魅力的になったのではないでしょうか。
 
10「YURAGI」
吹き抜けの空間がうまく演出されていました。光に水の入ったペットボトルを当てることで見事にゆらぎを表現していました。この作品の良い点は、揺らぎを映像としてプロジェクターで表現するのではなく、作品を見る人自身がペットボトルでゆらぎを作り出し楽しめる点であると思います。
 11「ミチビクヒカリ〜カムカム」
各作品のイメージを光色で表現し、誘導効果をもたらす考えは伝わってきました。入り口だけでなく、学校内のいろいろな場所に導く光を配置すればよかったのではないでしょうか。また、矢印の照明器具だけでなく、グラデーションがかかった光で建物内に誘導したり、全体のテーマである「シルエット」を建物や路面に浮かび上がらせ誘導させるなど、バリエーションがあると面白かったと思います。
笹本哲弥(小糸工業株式会社)


 今年のイルミネーションは、テーマが与えられたことによって前回、前々回よりも全体として整った印象を受けました。また、全てを光らせるのではなく反射を利用したりする等、実際にキャンパスに配置したときの見え方や素材が考えられており、「シルエットで魅せる」というテーマが全体的に上手く表現されているなと感じました。通用門に並ぶカラフルなキャンドルはシンプルな光ですが、とても綺麗だと感じました。また、楽しそうに遊ぶ子供の姿が多く、ただ見るだけでなく参加できるようなイベントが出来ていてとても良かったと思いました。
平成17年度 建築学科卒業生


制作者の感想